矯正指導医.専門医による矯正歯科治療
矯正指導医.専門医による矯正歯科治療
様々な矯正装置を用いて患者様自身に備わっている生理的な歯の移動やあごの成長発育の適応力を調整することにより、主に歯並びと咬み合わせに関する問題の改善を図る医学的にもユニークな治療です。歯並びや口もとの形が改善することで審美性の向上だけでなく、咬み合わせが改善することによる咀嚼・発音・嚥下といった身体機能の向上、歯の手入れが容易になることでむし歯や歯周病といった歯科疾患の予防にも繋がり、患者様の生活の質(Quality of life: QOL)の向上に貢献します。
また、患者様の症状や反応に合わせた最適な治療を提供するオーダーメイド治療のため、時間も費用も掛かりますが、患者様自身の歯や骨格の形を活かしつつ、他の治療法では得られない歯やあごや歯の周囲の骨や歯茎の位置や形の自然な変化も引き出すことができます。
一方で、咬み合わせは人間の体の中で非常に繊細な調整を受けてバランスが保たれています。そのため、見た目の歯並びや口もとの形にとらわれすぎて咬み合わせの変化に配慮が足りない治療を受けると、患者様の身体に悪影響が生じる可能性もあります。治療計画の立案と毎回の診察時の調整は、信頼できる適切な医療機関で一貫して慎重に実施される必要がありますので、矯正歯科治療を開始する歯科医院の選定は慎重に行っていただきたいと思います。
当院で行う矯正歯科治療では各種の取り外しができる装置や取り外しができない装置を組み合わせて用いますが、一部取り扱いがない装置があり、すべて保険適用外の治療になります。(先天性疾患や顎変形症など一部保険対象疾患もありますが、当院は保険適用施設ではありません。)
正常でない咬み合わせ(不正咬合)の症状(状態)は多種多様で、多くの症状が混在し、その原因も様々です。
叢生(でこぼこ)
歯が大きい、あごが小さい、内側に傾いているなどの理由によりでこぼこや八重歯など歯並びの不正がある状態です。
空隙歯列(すきっ歯)
歯が小さい・歯が少ない、前歯が前に傾いているなどの理由により、歯列に隙間がある状態です。
上顎前突(出っ歯)
上の前歯が外側に傾いている、上あごが前にある/大きい、下あごが後ろにある/小さいなどの理由により相対的に上の歯が前にある咬み合わせの状態です。
下顎前突(受け口)
上の前歯が内側に傾いている、上あごが後ろにある小さい、下あごが前にある/大きいなどにより相対的に下の歯が前にある反対の咬み合わせの状態です。
過蓋咬合
あごの骨格や咬む筋肉など理由により、上下の前歯や奥歯の重なりが大きい状態です。
開咬
あごの骨格や咬む筋肉など理由により、上下の前歯や奥歯の重なりが小さい、もしくはない状態です。
過剰歯・埋伏歯・歯の欠損
歯の数が多い、歯が足りない、歯が埋まって生えてこない、もしくは傾いて一部しか生えてこない状態です。
1
初診相談・経過観察
現状の生え変わりや咬み合わせの状態を確認し、適切な開始時期を検討します。適切な開始時期に達していなければ、間隔をあけて経過観察します。
2
検査・分析
問診・顔面写真・口腔内写真・歯型・咬み合わせ・レントゲン等の記録をとり、検査結果を詳しく分析します。
3
診断
生え変わりや咬み合わせに関する問題点をリストアップし、治療計画立案並びに抜歯の必要性や使用する装置などを検討します。
4
説明と同意
現在の問題点と治療計画、起こりうる問題や必要なご協力等のご説明を行い、ご同意をいただいてから治療を開始します。
5
動的矯正歯科治療(第I期)
乳歯と永久歯が混在している6歳頃から12歳頃まで、前歯の反対の咬み合わせの改善や上下のあごの成長誘導、習癖の改善などが必要な場合に行います。
6
再検査・再診断
永久歯萌出・成長発育後の検査・分析・診断並びに説明と同意を、第 I 期治療終了後の必要な場合に行います。
7
動的矯正歯科治療(第II期)
永久歯がほぼ生え揃った10-12歳以降から大人まで、上下の永久歯列全体または一部歯列の歯並びや咬み合わせに関する治療です。
8
保定・観察:動的矯正歯科治療(第II期)
終了後最低2年以上で、親知らずの歯根完成や抜歯が終わるまでの期間に保定装置を用いる再発や後戻りの防止を目的とした治療期間です。再発・後戻りが生じていないかと保定装置の確認がメインの経過観察になります。必要があれば装置の修理や歯石除去、保定装置使用中止後の経過観察なども行います。
矯正歯科治療は、患者様ご本人やご家族の協力がいただけないと成功いたしません。毎日装置の周囲の手入れを欠かさないこと、一時的なお痛みが生じることがあること、定期的に通院していただくこと、取り外しできる装置は毎日必要な時間取り付けていただくこと、などのご協力が必要になります。ご本人ともなぜ今治療を受けなければならないのか、十分納得された上で開始するようになさってください。
また、一度矯正歯科治療を開始すると元の咬み合わせの状態には戻れなくなります。直接治療を担当していないとわからないことも多いので、治療途中で転院するのはお勧めできません。最初から信頼できる医療機関で治療を開始できるようになさってください。