歯科治療恐怖症の患者様のケース
- 2024年1月10日
- 歯科
こんにちは。院長の中村です。
今回は、歯科治療恐怖症の患者様のケースについてご説明致しますね。
歯科治療が苦手な方は多くいらっしゃると思いますが、その理由はさまざまです。音が嫌い、長時間口を開けているのがつらい、痛みに敏感、などあるかと思います。また、歯科治療中の血圧はユニットに座った安静時の状態から2割ほど上昇することもわかっております。治療は体にストレスを与えています。そのような中でも緊張する患者様や歯科治療恐怖症と診断されるような患者様に静脈内鎮静法という治療があります。
静脈内鎮静法とは
静脈内鎮静法を使う治療がありますが、静脈内鎮静法は点滴確保を行い、鎮静薬の血中濃度をコントロールするので効果は確実になりますが、薬の副作用も強くでます。静脈内鎮静法では呼吸抑制(呼吸をしなくなる)などの副作用・リスクがあり、麻酔医のもと施行するのが安全です(安全確保のため時間もコストも必要になります)。全身疾患によっては鎮静の深度を上手く調節する必要があります。
鎮静法は、意識がない状態の全身麻酔法とは大きく異なり、意識がある状態での方法で、基本的には筋弛緩薬(筋肉の動きを止める薬。使用すると、呼吸も止まります)を使用しないので、体の動きや反射を完全には止めません。治療中の問いかけに患者様は反応でき会話が可能な状態ですが、興奮する神経(交感神経、副交感神経のバランス)をコントロールしてリラックスした状態で歯科治療を行うことができます。歯科治療に対して極度に緊張する、歯科治療が怖い、注射針の先が怖いなどの歯科治療恐怖症の方、疾患がありあまり精神的なストレス(交感神経刺激など)をかけたくない方が対象になります。また、静脈内鎮静法では、治療中問いかけに反応していても治療後にはそのことを忘れている(前向性健忘)ことがあります。その効果自体は治療に有効な効果となりますので、その作用も使用します。鎮静法を使用するにしても、歯科治療がある程度できたということが重要であり、治療が可能であればそれが患者様のその後の歯科治療の自信につながります。回数を重ねると鎮静法なしで歯科治療を行うことができるようになっていく場合もあります。
それぞれ適応がありますので相談の上治療計画をたてていきますね。
静脈内鎮静法について
鎮静薬を静脈内に投与します。静脈路確保(点滴を確保)を行う必要がありますが、鎮静薬が血中に直接拡散するので血中濃度がすぐに上昇し効果が早くでます。笑気吸入鎮静法より鎮静効果は確実ですが、全身麻酔と比較すれば呼吸(挿管、人工呼吸など)と循環(心臓の動きや血液の流れ、血管の拡張など)への影響が少ない方法となります。どうしても静脈路の確保ができない場合は中止になります。
⚪適応の患者様
歯科治療に不安や恐怖心を有する
全身疾患を有しストレスを少なくしたい
不随意運動がある(程度によります)
⚪非適応の患者様(当院は歯科医院であり、医科のある病院ではありませんので、症例によっては静脈内鎮静法の適応が厳しくなる場合があります。)
気道・呼吸器系に重度の疾患があり、誤嚥にハイリスクの患者様
循環器系に重度の疾患がある患者様
静脈確保困難の患者様
静脈内鎮静法実施日当日は、
朝の食事を制限していただきます(嘔吐物誤嚥防止のために胃の中をからにします)。基本的には水分(水、お茶のみ、牛乳などは禁止)の摂取になります。糖尿病の患者様は食事制限になるため血糖降下薬の内服、注射は医科の先生と相談いたします。血糖降下薬の当日内服、注射が中止になることがあります。
30分前に来院していただきます。バイタルサイン など(血圧、心拍数、心電図、動脈血酸素飽和度SpO2、体温)を確認します。
・前腕あるいは手背より静脈路を確保します。
・輸液を行いながら、鎮静薬を静脈内に投与します。
・反応を観察しながら歯科治療を行い、鎮静薬の量も調節します。
実施後
静脈内鎮静法は前向性健忘とともに、神経抑制が残ります。歩行できる状態、飲水可能、意識清明になるまで石神井公園駅前四季デンタルオフィスにて休んでいただきます。
静脈内鎮静法実施後の注意事項⚠️
ご自身で車の運転をすることは禁忌です。また、電車のホームでも気をつけて歩行していただく必要があります。付き添いあり、タクシーなどであると一番安全が確保できます。