歯周病について
こんにちは。院長の中村です。
今回は抜歯の原因で最も多いのは歯周病についてです。
歯周病というと歯ぐきの出血や腫れといった症状が代表的ですが、それ以外にもトラブルが起こります。
歯ぐきからの出血や腫れ症状は、歯周病の初期にみられる比較的軽い症状で、いわゆる歯肉炎の状態です。歯周病はそこからさらに炎症が歯ぐきの内側に広がっていくと、歯を支える骨を溶かしていいってしまいます。そうすると、歯を支える骨がなくなってくるので、だんだんと歯が揺れて食べ物が噛みにくくなり、歯ぐきから出血や膿が出はじめて、口臭の原因になるなどの症状がでてきます。歯がぐらぐらになるほど骨が大きく溶けてしまうと、結果的には歯を残せなくなるケースもあります。
実際には、歯周病で歯が抜けてしまう人は非常に多いです。
抜歯の原因で最も多いのは歯周病でして、抜歯原因の約4~5割を占めています。とくに45歳以降になると歯周病で歯を失う人の割合が増加して、60歳以降になるとさらに抜歯原因の半数近くを歯周病が占めるようになってしまいます。
若い頃よりも年を取ってからのほうが歯周病で歯を失うリスクが高くなるのです。
歯周病というのは比較的緩やかに進行する慢性疾患なのですが、ある程度病状が進行するまでは痛みなどの症状がありません。発症してもそれに気づかず、知らないうちに進行していくのが歯周病のやっかいなところです。若い頃は何ともなかった歯がいつのまにかグラグラするようになり、気になって歯科医院に行ったらすでに手遅れだったということも、歯周病ではめずらしくありません。
前回も繰り返しお伝えしておりますが、歯周病を放っておくと全身の健康にも影響がでます。
歯周病は歯が抜けるだけでなく、近年は「全身の病気にも関係していると言われてています。
糖尿病はその代表的な病気の1つです。歯周病は糖尿病の発症や進行に悪影響を及ぼすだけでなく、歯周病を治療することで血糖値が改善することも多くの研究で明らかになっています。
糖尿病のほかに、歯周病との関連がわかっている全身の病気の主なものに、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性肺炎、妊婦の早産・低体重児出産などのリスクが考えられます。いずれもまだ研究段階ですが、歯周病がこれらの病気の有病率や死亡率に影響を与えるというデータも報告されています。さらに、近年はアルツハイマー型認知症との関連も指摘されているため注意が必要です。
なぜ、お口の中に発生する歯周病がこのような全身の病気にも影響を与えてしまうのかと言いますと、
歯周病菌やその毒素、あるいは歯周病によって発生する炎症物質が歯ぐきの血管から全身に送られることが要因の1つです。例えば、糖尿病の場合は歯周病に関連した炎症物質が血糖値を下げるインスリンの働きを悪くしてしまうことが、糖尿病の発症や悪化の原因になっています。また、誤嚥性肺炎については口内の細菌が誤って気管から肺に入って感染することで引き起こされます。肺炎は死亡原因の5位に上がっており、とくに高齢者ほど死亡リスクが高くなるため注意が必要ですよ。
歯周病もむし歯と同じく「毎日の歯磨き」がケアの基本なので、まずは子どもの頃から行っている基本的なセルフケアを継続していくことが重要です。一方で、20代後半から30代にかけては仕事やライフスタイルの変化などにより生活が不規則になったり、ケアがおろそかになったりすることも多くなります。そのタイミングで歯周病も徐々に発症、進行していくので、30歳前後あたりからはとくに歯周病を意識したケアを行っていただきたいと思います。
歯周病を意識したケア(歯周病ケア)とは、具体的にどのようなことに取り組めばよいのかと言いますと、
例えば、歯磨きは「噛む面」や「歯面」にくわえ、「歯と歯ぐきの境目」を意識してブラッシングするのも対策の1つです。また、1日1回はデンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃も必ず行いましょう。さらに、歯周病菌の温床となる歯石を、歯科医院で定期的に除去することも重要です。
歯周病はセルフケアだけでなく、歯科医院で行うケアも重要になるのですよ。
歯科医院での定期ケアには予防の強化にくわえ、歯周病の早期発見という側面もあります。歯周病は自覚症状に乏しく発見が遅れやすいため、定期的に歯科医院に通うことは病気の早期発見という意味において非常にメリットは大きいでしょう。したがって、3か月に1回は歯科の定期健診を受けることをおすすめします。
歯周病は歯を失う原因で最も多くの割合を占める病気ですが、痛みなどの症状がないため気づかずに放置されるケースが少なくありません。歯は失ってはじめてその大切さに気付くものです。ぜひ本記事をきっかけに、定期的に歯科医院に足を運んで歯周病の早期発見・早期治療に結びつけていただければと思います。
歯周病の最大のリスクは自分の歯を失うことですが、近年はそのほかにも、糖尿病や認知症、心筋梗塞など全身の病気にも影響を及ぼすことがわかっています。その歯周病は自覚症状がなく、自身で気づかないうちに手遅れになってしまうこともめずらしくないようです。日々のセルフケアの徹底にくわえ、歯医者さんにも定期的に通いながら早期発見に努めていきましょうね。
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